電動機は動き出す瞬間が一番の難所です。定格の何倍もの始動電流が流れるため、これを抑える工夫が必要になります。代表格がスターデルタ始動です。
あの…前に家で掃除機をつけた瞬間、部屋の照明がふっと暗くなったんです。
あれって関係ありますか?
とても鋭い観察ね、ましろちゃん。
あれこそ今日のテーマそのものよ。
電動機は動き出す瞬間に、定格電流の5倍から8倍もの電流が流れるの。
マジで!? 8倍って、そんなに食うの?
この大電流を始動電流というわ。
止まっている回転子は、すべりが1、つまり磁界とまったく同じ速度差の状態。
誘導される電流が最大になるの。
そして大電流が流れれば、電線での電圧降下も大きくなる。
だから同じ系統につながっている照明が一瞬暗くなるのよ。
ましろちゃんが見たのは、まさにその現象。
えへへ、なんだかうれしいです。
ちゃんと理由があったんですね。
でもさ、暗くなるくらい別にいいじゃん?
…ジャスミンさん、それは工場だと困るのよ。
他の機械が電圧不足で止まったり、遮断器が落ちたりする。
だから始動電流は抑えるのが原則なの。
そこで登場するのが始動法。
小容量なら定格電圧をそのままかける全電圧始動、いわゆる直入れ始動でいいわ。
構造が単純で安いのが利点ね。
でも中容量以上になると、始動時だけ電圧を下げる工夫をするの。
その代表がスターデルタ始動よ。
スターデルタ…星と三角?
そう。
始動するときは巻線をY結線にして、回転が上がってきたらΔ結線に切り替えるの。
Y結線では巻線1相あたりにかかる電圧が線間電圧の1/√3になるわ。
電圧が1/√3になると、電流も1/√3。
さらに三相全体で見た線電流は、そこからもう一段下がって、結果として始動電流は全電圧始動の1/3になるの。
1/3…だいぶ助かりますね。
でも、いいことばっかりなんですか?
いいえ。
ここが試験の急所ね。
トルクは電圧の2乗に比例するから、電圧が1/√3になるとトルクは1/3。
つまり始動電流も始動トルクも、どちらも1/3になるのよ。
えーっ、力も3分の1に減っちゃうの? じゃあ重い荷物を持ち上げるやつだと動かないじゃん。
そのとおり。
だから重負荷の起動にはスターデルタ始動は向かないわ。
電流は減らしたいけど力は欲しい…そのトレードオフを理解しているかを試験は問うてくるの。
覚え方はシンプル。
スターデルタ始動は「電流も トルクも 1/3」。
この2つをセットで暗記してしまいなさい。
確認クイズ
スターデルタ始動法を用いた場合、始動電流および始動トルクは、全電圧始動の場合と比べてそれぞれ何倍になるか。
- 始動電流・始動トルクとも 1/3 倍
- 始動電流・始動トルクとも 1/√3 倍
- 始動電流は 1/3 倍、始動トルクは 3 倍
- 始動電流は 1/√3 倍、始動トルクは 1/3 倍
こたえを見る
正解: 1. 始動電流・始動トルクとも 1/3 倍
始動時にY結線とすると、巻線1相にかかる電圧が線間電圧の1/√3になります。その結果、始動電流も始動トルクも全電圧始動時の1/3になります。電流だけが減ってトルクはそのまま、という都合のよい話ではない点が最大のポイントです。選択肢3のようにトルクが増えることはありません。