交流では、電圧と電流を掛けた値がそのまま消費電力にはなりません。3種類の電力と、それを結ぶ力率という考え方を理解しましょう。
先生、質問があります。
交流でも P = VI で電力が求まるのでしょうか。
いい質問ね。
答えは「求まらない」。
交流では VI は見かけの電力にすぎないの。
ちょっと待って。
見かけって、じゃあ本物の電力は別にあるってこと?
そう。
VI を皮相電力といって、単位はボルトアンペア[V·A]。
そのうち実際に仕事をするぶんが有効電力[W]、行ったり来たりするだけのぶんが無効電力[var]なのよ。
ぽわわ〜…お財布から出したお金のうち、ほんとに使ったぶんと、貸して返ってくるぶんがある感じ?
…ましろちゃん、その喩え、意外と的確ね。
悔しいけど。
そして、皮相電力のうちどれだけが有効電力になったかの割合が力率。cosθ=P/S と書くわ。
回路の値からも出せます。cosθ=R/Z。
インピーダンスの直角三角形の、底辺 ÷ 斜辺ですね。
あたしわかった気がする! さっきの 8Ω と 10Ω の三角形なら、8 ÷ 10 で 0.8。
力率80パーセントってこと?
そのとおりよ、ジャスミンさん。
しっかり繋がったわね。
では数字で総合演習。
R = 8Ω、X = 6Ω、Z = 10Ω の回路に100V。
電流は 100 ÷ 10 = 10A。
皮相電力は S=VI で 100 × 10 = 1000V·A。
有効電力は…P = VIcosθ で、1000 × 0.8 = 800W、ですか?
正解。
検算もしておきましょう。
有効電力は抵抗だけが消費するのだから、P = I²R = 100 × 8 = 800W。
ぴったり一致するわ。
おお〜、別ルートでも同じ答えになるの、気持ちいいね!
無効電力も見ておきましょう。
sinθ は 6 ÷ 10 = 0.6 だから、Q = 1000 × 0.6 = 600var。
有効800と無効600、そして皮相1000。
この3つも3-4-5の直角三角形になっているのよ。
800と600と1000…ほんとだ、また同じ形! 電気って三角形だらけなんですね。
確認クイズ
単相交流回路で、電圧 100V、電流 5A、力率 60% であるとき、有効電力[W]はいくらか。
- 300W
- 400W
- 500W
- 833W
こたえを見る
正解: 1. 300W
有効電力は P = V × I × cosθ で求めます。力率 60% は cosθ = 0.6 なので、P = 100 × 5 × 0.6 = 300W です。選択肢3の500Wは皮相電力 S = V × I = 500V·A の値で、これは有効電力ではありません。力率を掛け忘れると皮相電力の値をそのまま答えてしまうので注意しましょう。なお無効電力は sinθ = 0.8 より 500 × 0.8 = 400var となります。